りんご黒星病のこと

りんご黒星病のこと
りんご黒星病
りんご黒星病

●黒い点は何?

この黒い点は、りんご黒星病の
いわば、かさぶたです。
 
黒い星の実体はカビで、
中まで達してないので
皮をむけば普通に食べれます。
葉っぱにも出てひどいときは、
葉っぱが全部落ちたりします。
 
予防には、病気の葉っぱや果実を焼却処分したり、

農薬散布ぐらいしか打つ手がありません。
 
赤道より上にでたものは、
特に商品価値がなく、
廃棄処分となります。
農協の選果場では、
とんでもない量のりんごが
捨てられています。
 
りんごには病気や害虫が多く、
国内農産物では最も多く、26種以上になります。(長野県調べ)

種類数は被害度は必ずしも比例はしませんが、
黒星病、ふらん病は激発することがあり怖い病気です。

さらに、りんごは花が5月上旬、一番遅いふじは収穫が11月下旬と
なっている期間も長く、果実も大きく甘いので、
病害虫や鳥害を受けやすいのです。

さらに、さらに収穫後も、雪のなかで寒風にさらされて、
ネズミやシカにかじられて病気が入りやすくなったりします。

稲や麦なら刈り取り後の植物体は田んぼや畑には、もうありませんので、
管理がしやすいのです。

↓↓↓↓ こちらは、横っ腹に出たものです。

りんご黒星病
りんご黒星病

↓↓↓ この点も同じです。ただ、箱を開けた瞬間目に付くので、
赤道面より上に出たものは特に評価が低くなります。

りんご黒星病
りんご黒星病

果物、野菜には様々な病害虫がつきますが、表面だけのものも多く、
分かっていれば、気にする必要なし、なものもたくさんあります。

ただ、いちごの灰色かび病、ももの灰星病、さくらんぼの灰星病などは、
まさに腐った果実なので、商品化には無理があります。

↓↓↓↓ こちらは、左側、黒星病、右側はカメムシの刺し傷です。

りんご黒星病とカメムシ被害
りんご黒星病とカメムシ被害

黒星病は表面だけですが、カメムシの刺し傷は果肉まで達して、
スポンジ状に茶色く変色してスカスカになって
食べれません。

●りんご選別の手間

大きさ、着色具合、カタチ、
病気のあるなし、虫食いのあと、
など、様々な外観チェックで、
段階分けされます。
 
特に大きさでは、
5キロで14玉、16玉、18玉、20玉など
いつくもの緑の穴ぼこ緩衝材を、
農家は用意して在庫となり場所をふさぎます。
化粧箱も同じです。 

 
その選別の手間は、時間(時給)であり、
消費者からみればコストになります。

実際、選果場ではベテランの職員何人もが、
りんごの流れてくるレーンに陣取って、
目視で選別しています。
彼らの給料は価格となって、
消費者が負担することになります。

 
中間の流通業者としては、
その先に販売するには、
クレーム予防のため、
見た目の良いもの形のよいものを求めます。

5キロ14玉の箱を10箱で、
140玉、1個いくらの値段で、
利益率いくら、という計算のためには、
箱内の玉数がバラバラでは
具合が悪いのです。
 
これは、きゅうりでも同じです。

曲がったきゅりが入ると、
箱内本数の統一ができにくくなる。

さらに、スーパーや生協などでは、
ちらしを9月20日入れたので、
21日着でないとダメという
流通上の都合で、
未熟のりんごやぶどうが出荷されたりします。
 
 
ただ、現在のように、
農家から(ほぼ)直での流通が可能となったいま、
個人消費のりんごにそこまで
厳しい外観チェックは不要と私は思っています。
手間の分、安くできる。
 
 
道の駅や直売所であれば、
キズりんごや、
カタチの悪いきゅうりなども
安く売っていますが、
何段階も中間業者を通ると、
その売り先からのクレーム防止のために、
色、カタチ、キズなどない絵のようなりんご、
品評会に出すようなりんごが必要となります。
 
 
箱を開けて、14玉のりんご全部に
黒星病がついていたら、
誰でも嫌な気持ちになるでしょう。
カメムシに吸われた痕は、
果肉まで達して食べる部分が減ってしまいます。
それをカットする手間も必要です。
 
ただ、りんごは農産物であり、
工業製品ではありません。
完璧を目指せば目指すほど、
選別の手間(時間:時給)が上乗せされ、
価格に反映します。
 
 
例として楽天では長野県志賀高原シナノドルチェ5キロは
7200円です。ただし、いつ収穫したものか不明。

あとはお客様の選択です。

私としては、
農家自身の選別の手間より、
収穫から日が経ってないりんごを
できるだけ早くお届けしたほうが、
歯ざわり、味に大きく影響すると思っているので、
大きさはバラバラ(重さ基準)、形もいろいろ、
多少の病害虫も、よし、としています。

ただ、人によりその基準は異なるので、
我慢できないという方は、
ネットでもいくらでも売ってますので、
そちらからお求めください。

●病害虫のこと

りんご以外にも、梨やきゅうりにも黒星病がでます。
ただ、生物としてのカビの名前は別々です。

病気の名前は、いわば通称で、症状からついているので、
同じ漢字の名前でも実体のご本尊のカビ(本名)は別という事例がたくさんあります。

もちろん、通称名も本名も同じという例もあります。

灰色かび病は、Botrytis cinerea というカビで、  
いちご、きゅうり、レタス、豆、ぶどうなどたくさんの野菜・果物につきます。
ただ、あるタイミングの灰色かびはぶどうにつくと、
貴腐ワインという高級ワインのきっかけにもなり、
生物界の不思議さには、驚きます。

虫の場合は、カメムシといっても、
クサギカメムシとかチャバネアオカメムシとか、
ツヤアオカメムシとか、
個々の名前があり、
りんごでも梨でもみかんでも共通だったりします。

●農薬会社30年の経験

なんで、こんなこと詳しいのかというと、
私は農薬会社の研究所をスタートに、
全国30の都道府県で仕事してきました。

だからこういうことを何も見ないで書けるのです。

一般のネットショップはもちろん、
直売所、スーパー、果物店、農協、仲卸、などでは、
こんなこと説明できる知識も暇もないため、
とにかく、きれいなりんご、きれいなキュウリを、選別の手間をかけて、
出荷します。
だから、フツーの消費者は、農産物も工業製品と同じ感覚となる。

無農薬なら多少の虫くいでも我慢できる、という意見もよく聞きますが、
虫食いよりも病気の方がりんごの場合はダメージが大きいのです。
黒星病がひどいときは落葉してりんごは一つもなりません。

あるいは、黒星病だらけのりんごや梅、
きれいなのと同じ値段で買ってくれますか?

青森県のりんご栽培の歴史は、ふらん病と、黒星病との戦いの歴史です。

●豆知識

黒星病という日本語は便利ですが、
病気の原因のカビ(専門的には糸状菌という)の
名前はそれぞれ以下のとおり別々のカビの名前がついています。
だから必ず作物名とセットでの命名が基本です。

リンゴ黒星病   Venturia inaequalis
ナシ黒星病    Venturia nashicola
ウメ、モモ黒星病 Cladosporium carpophilum

キュウリ黒星病 Cladosporium cucumerinum

よく似た言葉に、細菌(バクテリア)がありますが、
これは、糸状菌よりも小さく顕微鏡で見ないと
姿は見えません。
植物の病気としては野菜類軟腐病、カンキツかいよう病などが
有名どころ。
ウィルスはさらに小さく電子顕微鏡でないと見えません。

こういった、小さい生き物を総称して微生物、
悪さする微生物をばい菌とか言ったりしますが、
学術的ではありません。

納豆菌とか、こうじ菌などのように、
人間にとって、よろしい微生物もおりますので、
仲良くしたいものです。